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2018.02.06

10人に1人が糖尿病?世界でも増え続ける糖尿病はなぜ多い

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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10人に1人が糖尿病。予備群を含めると10人に2人は高血糖

平成29年9月に公表された、平成28年「国民健康・栄養調査」の結果によると、糖尿病が強く疑われる者(糖尿病有病者)、糖尿病の可能性を否定できない者(糖尿病予備群)はいずれも1,000万人と推計されています。これは20歳以上の成人だけの計算です。(参考リンク①)要するに日本人(20歳以上)全体の約12%が糖尿病で、同じく約12%が糖尿病予備群という結果です。

皆さんの中には糖尿病の予備群と言われて経過をみている方もいれば、糖尿病と診断されて治療を受けている方もいる一方で、糖尿病なんて関係ないよ、と気にもかけていない人もいると思います。しかし、実際には誰も糖尿病は無関係とは言えない世界に、皆さんは今暮らしているのです。

世界でも糖尿病は増えている!

日本に糖尿病が多いことは分かりました。これは日本だけのことなのでしょうか?実はそうではありません。
世界保健機構(WHO)は2016年の世界保健デーに、世界の糖尿病についての報告書を発表しました。それによると糖尿病の人口は世界で2014年までに4億2200万人に達すると報告されています。1980年の実に4倍になっているのです。世界の人口の男性で9%、女性で7.9%が糖尿病であると推計されています。(参考リンク②)

アメリカの米国疾病管理予防センター(CDC)の2017年の報告書によると、2015年の時点で18歳以上の人口の9%が糖尿病有病者で、34%が糖尿病予備群であると記載されています。(参考リンク③)

日本の統計とは計算法の違いもあり、単純に比較は出来ませんが、大人の1割くらいが糖尿病というのは、もう世界的な傾向である、ということは分かります。予備群は更に多いのです。

そして、日本人の糖尿病が多いかどうかは分かりませんが、先進国と比べても少なくはないことは間違いがありません。

1型糖尿病と2型糖尿病

糖尿病には1型と2型の2種類がある、という話を聞いたことがある方が多いと思います。これまでの説明ではそうした区別はなく、ひとくくりで「糖尿病」と言っていました。

それはどうしてなのでしょうか?

実は95%以上の糖尿病は2型糖尿病なのです。これまでの説明の中での糖尿病は、その中には1型も少し混ざってはいるのですが、基本的には2型糖尿病の話なのです。それでは、1型と2型の糖尿病はどう違うのかをご紹介いたします。

1型糖尿病とは何か?

1型糖尿病というのは、身体がブドウ糖を利用するために必要なインスリンというホルモンが、何らかの理由により高度に欠乏して、インスリンを注射しないと生きて行けないような状態となる糖尿病です。お子さんに発症することが多いため、小児糖尿病のように言われていたこともあります。一度発症すれば治るということはなく、膵臓移植などの特殊な治療以外は、生涯インスリンの注射を打ち続ける必要があります。

その原因はまだ不明ですが、特定の国や地域によってその罹患率に大きな差があることや、ウイルス感染などのきっかけが見られることなどから、遺伝的な素因と自己免疫による関与などが、発症メカニズムとして想定されています。ちなみに日本での発症率は、年間10万人当たり1人から2人くらいですが、フィンランドは10万人当たり64.9人と、非常に高い発症率を示しています。

以前には小児期の発症が殆どと考えられていましたが、最近成人で発症する劇症型の糖尿病が、1型糖尿病の成人型と考えられるようになり、成人の1型糖尿病は世界的にその報告が増えています。

2型糖尿病とは何か?

2型糖尿病は、日本では糖尿病の患者さん全体の95%以上を占め、生活習慣病としての糖尿病と言う時には、ほぼこの2型糖尿病のことを指しています。通常肥満が先行することが多く、遺伝要因(糖尿病の生まれつきのなりやすさ)と、環境要因(暴飲暴食、肥満などの生活習慣)が、合わさって発症すると考えられています。

インスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性と、1型糖尿病と同じインスリン不足の、両方が関連して血糖が上がるのですが、1型糖尿病と比較するとインスリンの不足は軽く、特に初期にはインスリン抵抗性が主な原因となることが多いのです。ただ、日本人の糖尿病は、当初からインスリン不足が原因となり、あまり太らないケースが多い、という見解もあります。

1型と2型の糖尿病はどちらが増えているのか?

1型と2型の糖尿病はどちらも増えているのです。ただ、その原因はそれぞれ違うと考えられています。
1型糖尿病は自己免疫の病気なので、感染症や一部の食品由来の成分が、原因ではないかと推測されています。ただ、詳しいことは分かっていません。
2型糖尿病が増えているのは、肥満の増加や、運動をあまりせず、動物性脂肪や炭水化物を沢山摂るような生活をする人が増えていることが、その大きな原因と考えられています。

糖尿病が生活習慣病と呼ばれるのはそのためなのです。

糖尿病の検診を受けて病気を予防しよう

糖尿病を予防するためには、検診で糖尿病の予備群ではないかどうか、検査をしてチェックすることが大切です。前述のWHOの報告書でも、糖尿病のスクリーニング検査の重要性が強調されています。
中でも一番大切な検査は血液のヘモグロビンA1c(エー・ワン・シー)という検査で、この数値(NGSP値)が6.0%以上6.5%未満であると予備群の可能性があり、6.5%以上であると糖尿病の可能性が高いのです。

市町村や会社の健診では、必ずこの検査が含まれていますから、皆さんも必ず毎年の健診を受け、その数値が高めであれば、お医者さんや保健師さんなど、専門家のアドバイスを受けるようにして下さい。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

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