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2017.07.19

子どもにフルーツジュースを与えてもよいのか?【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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暑い夏には冷たい飲み物が美味しいですよね。ご家庭によっては一日に何度もフルーツジュースをゴクゴク……、ということもあるでしょう。でも子供にジュースを飲ませているなら、その量はちょっと考えたほうがいいかもしれません。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「石原藤樹のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、今年のPediatrics誌に掲載された、お子さんの果物ジュースの使用についての提言です。

▼石原先生のブログはこちら

砂糖が添加されている果物ジュースは、子供向けではない

果物とフルーツジュースはまったく別のもの

果物ジュース、特に果汁100%以外の、砂糖などの添加されたジュースは、基本的には子供に適した飲み物であると考えられていません。
その一方で、上記文献の記載によると、2から18歳のアメリカの子供は、その果物の摂取の半分をジュースから得ている、という調査もあるようです。

生後6か月の時点から、果物のすりおろしや加熱したものを、少量ずつ摂ることは推奨されています。ただ、これはジュースで代用出来るものではない、というのが基本的な考え方です。

それでは、果物ジュースの何が問題なのでしょうか?

ジュースは果物より、糖分の摂りすぎや虫歯の危険が

果物ジュースの多くは、果物そのものをすりおろすよりも多くの糖分を含み、その一方で食物繊維や蛋白質はあまり含まれていません。そのために、生の果物のすりおろしなどの代わりに、果物ジュースを使用すると、お子さんはその甘さに慣れて、果物自体よりもジュースを好むようになり、糖質の過剰摂取に繋がりやすいと共に、虫歯などのリスクも増加する、というように考えられています。

反面果物ジュースには、ミネラルやビタミンなどを、手軽に摂取しやすいという利点もあります。薄めての使用が原則ですが、感染性腸炎などの時の経口補液としての有用性も、指摘をされています。

子供に飲ませていいジュースの量とは?

1歳未満の子供には飲ませないほうがいい

それでは現状は小児への果物ジュースの使用を、どの程度に考えるのが妥当でしょうか?
以下は上記文献にあるアメリカの指針です。

まず1歳未満の乳児においては、基本的に果物ジュースの使用は推奨はされません。
以前半分に薄めたリンゴジュースが、脱水時に有用との論文がありましたが、今回の指針においては、その効能も否定されています。
乳児期におけるジュースの使用は、糖質過多から栄養バランスを乱し、栄養失調や下痢などの原因となります。この欠点は、基本的には1歳以上の年齢でも同一です。

18歳以下でも226グラムまでが妥当

その点から、
1歳から3歳までは果物ジュースは1日1オンス(28.35グラム)まで、
4歳から6歳では1日6オンス(170.1グラム)まで、
7歳から18歳では1日8オンス(226.8グラム)まで、

というように制限することが妥当で、その代わりに生の果物を摂取するべきだ、という内容になっています。
ジュースを使用する場合には、100%ジュースを活用することが望ましいとされています。

ジュースを飲ませる際には量に注意

この見解が(特に分量など)そのまま日本で適応可能とは、勿論言い切れないのですが、お子さんに対する果物ジュースの使用は、その後の食生活への影響を考えると、大人が一考する必要はあるように思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36