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2017.06.07

AEDの使用で、1年後の死亡率や脳障害リスクはどうなる?【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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一般人でも使える心肺蘇生のツールとして、ここ近年浸透してきたAED(自動体外式除細動器)。駅や商業施設に配置されている事も多いので、街中でよく目にする方もいるのではないでしょうか。
このAEDを使って蘇生された患者さんを調べてみると、AEDを使用してない方に比べて、1年後の死亡率や脳障害のリスクが下がっているという驚きの結果になりました。

クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、ブログに執筆、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生。石原先生の人気ブログ「石原藤樹のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

本日ご紹介するのは、今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、院外心停止とその予後についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

AEDの利用にはどのような効果があるのか?

AEDの普及により心停止後の救命率は格段に上昇

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日本でも町のあちこちにAEDと呼ばれる、心臓に電気ショックを与えて、主に心室細動と呼ばれる重症の不整脈を、治療する装置が設置され、心臓マッサージや人工呼吸を含めて、救急蘇生の講習が、一般の方向けにも行われるようになりました。

その目的は、医療機関の外で突然心停止を来したような場合に、そのまま何もせずに救急車が到着するまで待っているのでは、心停止中に脳がダメージを受け、その後心臓の働きは再開しても、脳のダメージは元に戻らない、という知見を元にしています。実際に電気ショックを含めた適切な処置を、心停止から間もない時間に施すことにより、院外心停止の救命率は格段に向上していることが、国内外の調査で裏付けられています。

蘇生後、長期にわたるAEDの効果は

しかし、これまでに分かっているのは、主に心停止の発作後30日間という、生命予後と病状についてのみのデータです。
それでは、院外心停止で救命された患者さんの長期予後は、一体どのようなもので、それはAEDなどの使用の有無によって、改善する性質のものなのでしょうか?

心停止後30日間生存した方の1年後は?

デンマークで2800人余りを対象に、1年後の生命予後と後遺症の有無を検証

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その疑問を検証する目的で今回の研究では、国民総背番号制を取っているデンマークの医療データを活用して、2001から2012年に院外心停止を来し、30日経過した後にも生存していた2855名を対象として、その後1年の時点での生命予後と、後遺症の有無を初期治療毎に検証しています。その間の院外心停止は34459名(総数42089名から今回の登録基準を満たさないものを除外)で、その30日での救命率は8.3%となっています。

2001年から2012年の間に、その救命率は3.9%から12.4%に増加していて、AEDなどの使用の増加が、この救命率の増加に結び付いているものと想定されます。

心臓マッサージやAEDを受けると、1年後脳障害や死亡リスクが減少

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その30日時点の生存者2855名中、153名は一般の方によるAED(電気ショック)を受けていて、AEDを受けた患者さんの9割以上は心臓マッサージも一緒に受けていました。
534名は特に蘇生処置を受けずに救急車を待ち、1069名は心臓マッサージのみを受け、771名は救急隊員が居合わせて処置を受けていました。

その30日時点の生存者のうち、1年の観察期間中に脳障害を認めたか介護施設に入所した事例は、全体の10.5%で、死亡した事例は9.7%でした。

そして、その場に居合わせた人によって、心臓マッサージが施行された事例では、されなかった事例に比較して、1年後の脳障害もしくは介護施設入所のリスクは38%(95%CI;0.47から0.82)、1年後の死亡のリスクは30%(95%CI;0.50から0.99)、それぞれ有意に低下していました。
AEDによる電気ショックが行われた事例では、脳障害や死亡のリスクはより低くなっていました。

心臓マッサージやAEDを施行するメリットは大きい

心臓マッサージやAED処置を行うことで、脳障害や死亡のリスクは抑えられる

以上をまとめた図がこちらです。

赤の何も現場で蘇生処置をしなかった場合と比較して、心臓マッサージやAEDによる処置を行うことにより、脳障害のリスクや死亡リスクは明確に抑制されています。(青がAED使用で、緑が心臓マッサージです)
黄色は心停止時に1年後の障害も死亡リスクも、より低下していることが分かります。
黄色は救急隊員や救急医が現場にいて蘇生措置をした場合で、脳障害のリスクは最も低いのですが、死亡リスクは素人によるAED群より高く、これは患者さんがより高齢で持病のあるケースが多いことが、その原因と想定されています。

AEDは救命率アップのみならず、1年後の存命率の増加や脳障害予防にも良い影響が

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このように院外心停止を救命するには、心停止後速やかに、そばにいる人が心臓マッサージやAEDを施行することが、その時点でも救命率を増加させるばかりか、1年後の生命予後や脳障害の予防にも、良い影響を与えることが確認されたのです。

AEDの必要性と意義は、より高まったと言って良いように思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36