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2017.05.05

給与明細で「手取り」だけ見る人は損している|何が「天引き」されているかをご存じですか?

東洋経済オンライン

毎月手もとにやってくる給与明細ですが、読み方を知らない人は意外と多いものです(写真:toshi / PIXTA)

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毎月手もとにやってくる給与明細ですが、読み方を知らない人は意外と多いものです(写真:toshi / PIXTA)

お給料日前になると、毎月手もとに届く「給与明細」。みなさんも、すでに4月分の明細をご覧になったことでしょう。

ただ、みなさんがきちんと確認するのは、せいぜい「手取りがいくらか?」ということくらい。実は給与明細書の読み方をよくわかっていない人も少なくありません。確かに手取り額は気になりますが、何にどれだけのおカネが天引きされているか知っておくことも、社会人として大切な教養です。なぜなら、それはあなた自身の今、そして未来の生活に深くかかわっているからです。そこで今回は、給与明細の読み方の基本を、一緒に確認していきましょう。

時間外・休日労働は正しく記載されているか?

給与明細書は、3つの要素「①勤怠・②支給・③控除」から構成されています。


この連載の一覧はこちら。本記事は、2017年4月25日に開催された「働く女性のための情報サロン"Salon de Grace"」での講義内容を再構成したものです。

まずは、勤怠項目。ここには、労働日数、労働時間、年次有給休暇や特別休暇等を取った日数・時間、遅刻・早退・欠勤の回数や時間など、給与計算をする上での基本情報が記載されています。特に気をつけて見る必要があるのが、時間外・休日労働の時間が正しく記載されているか。残業代未払いの企業では、時間外・休日労働の時間数がブランクになっているケースが多く見受けられるので、注意したいところです。

次に支給項目です。チェックすべきは、基本給や資格手当等の毎月決まって支給されるもの以外の変動手当。この代表格は時間外労働手当です。勤怠に時間外労働時間数の記載がある場合に、それに見合った時間外手当が支給されていることを確認しましょう。

気を付けたいのは固定残業手当(みなし残業手当)が支給されている場合。仮に、30時間分の固定残業手当が支給されている会社で、実際の残業が35時間だった場合は、別途5時間分の時間外手当が支払われていなければなりません。ただ、時間外手当がきちんと支払われているからといって、油断は禁物です。それが正しい割増率で支払われているか、という点もポイントになります。

では、割増率はどのように計算すればいいのでしょうか。ここで1つ質問があります。月給制で給与をもらっている場合、みなさんの労働の「時間単価」がいくらになるかご存じですか? 時間単価の計算方法は、各社において賃金規程でルールが定められていると思いますが、一般的には、基本給に通勤手当や固定残業手当を除く諸手当を足した総額を、月平均所定労働時間で割った金額となります。

一見給与が高く見える場合でも、固定残業手当が多いと時間単価は思った以上に低く、なかには最低賃金を下回っていることがあります。ちなみに、東京都の最低賃金は2017年4月現在で932円です。

自分の時間単価がわかったところで、次に確認したいのは、正しい割増率で計算されているかどうか。残業と一口にいっても、法定内・法定外で変わります。たとえば、9時から5時まで、1日所定労働時間が7時間の会社の場合、1時間残業したとしても、法定労働時間(1日8時間)を超えていないので、割増は不要です。仮に時間単価が1000円であれば、1000円の支払いでよいわけです。ただ、午後7時まで残業するような場合は、労働時間が法定労働時間を1時間オーバーするので、その1時間分については2割5分以上の割増が必要となり、1250円を支払う必要があります。ちりも積もれば山となります。正しい割増率を理解しておくことが大切です。

「健康保険料」がやけに高いのはなぜ?

最後のポイントが控除項目です。一般的に給与から天引きされているものは、所得税、住民税といった「税金」と、「各種保険料」です。

さて、ここでまた質問です。いったい、あなたの給与から、何種類の保険料が徴収されているかご存じですか? 40歳未満の方であれば、原則として3つあります。

正解は、健康保険料、厚生年金保険料、そして雇用保険料。40歳以上の方は、さらに介護保険料も天引きされています。明細を眺めてみると、厚生年金保険料に次いで健康保険料が高いことがわかります。いったい、健康保険料は私たちにとってどのような役割を果たしているのでしょうか。

健康保険は、業務外に病気やケガをしたときに利用できるサービスで、治療を受けるときや処方箋を購入する際に保険証を提出すれば、3割の自己負担で済ませることができます。それだけではありません。病気やケガで仕事を連続3日以上休まなくてはならないときは、4日目から支給される「傷病手当金」や、産前産後休業中に働けないときにもらえる「出産手当金」も健康保険制度の給付金です。

傷病手当金は、医師が労務不能だと証明すれば、自宅療養であっても認められますので、インフルエンザが長引いてしまったような場合でも対象となります。仮に、支給開始日以前の1年間において、ずっと給与が30万円で変わらないとした場合、1日あたりにもらえる金額は6670円です。

また、高額の医療費がかかってしまう場合も、高額療養費制度を利用すれば、1カ月に支払った医療費について、一定の自己負担限度額を超えたおカネが戻ってきます。たとえば、医療費総額が100万円で、自己負担分30万円を支払った場合、約8万7千円が自己負担限度額となりますので、約21万3千円が戻ってきます(70歳未満で標準報酬月額28万~50万円の場合)。

最初から入院することがわかっているときは、あらかじめ「限度額適用認定証」を発行してもらうことで、退院時に病院に認定証を提示すれば、支払いが自己負担限度額まで、上記の例であれば約8万7千円で済んでしまうのです。

厚生年金保険料は、給与から天引きされている保険料の中でも高額ですが、これは将来もらえる年金につながっています。これからは今まで以上に長寿社会です。特に女性の平均寿命は男性よりも長いので、たとえパートナーがいても最後はおひとり様になってしまうことを覚悟しておかなければなりません。

老後の生活保障としてもらえる「老齢年金」は、原則として65歳からもらい始めることができます。実際にあなたがいくらもらえるか、簡単に知る方法は、「ねんきんネット」を活用すること。今後何歳まで働き、いくら稼ぐかを予測して、いろいろとシミュレーションすることができますので、ぜひサイトにアクセスしてみてください。

年金は老後ばかりではなく、病気やケガで障害を負ってしまったときの「障害年金」や、一家の働き手が亡くなってしまったときに生計を維持されていた配偶者や子どもに支給される「遺族年金」もあります。

「専門実践教育訓練給付」は18年から年間56万円に

給与明細から天引きされている保険料の中で、もっとも金額が少ないのが雇用保険料です。日頃あまり注目されませんが、実は活用する場面が意外と多いのをご存じでしょうか。

たとえば、退職・転職活動をするときにもらえる「失業手当」(正式名称は「基本手当」)、育児休業を取るときにもらえる「育児休業給付金」、介護休業を取るときは「介護休業給付金」もあります。

また、スキルアップを図りたいときは、「教育訓練給付金」があります。従来からある一般教育訓練給付金に加えて、専門的なスキルや資格を取って、これからのキャリアに生かしたいなら「専門実践教育訓練給付」がおすすめです。当分の間、雇用保険の被保険者期間が2年間ある人ならば受けられるので、1度どのような講座が受講できるか調べてみるのはいかがでしょうか。最大で年間48万円、2018年1月からは最大で年間56万円分と拡大するので、これからがチャンスです。

このほか、給与明細書には載っていませんが、労災保険もあります。なぜ明細に載っていないかというと、保険料を全額事業主が負担しているから。通勤途中や業務上の傷病は労災保険でカバーされるので、いざというときも安心です。

給与明細書から天引きされているそれぞれの保険料には、私たちの生活に役立つ仕組みがいろいろとあります。こうした仕組みを知って、ぜひうまく活用していただければと思います。

さて、ここからはQ&Aコーナーです。実際に働く女性たちから出た給与に関する疑問に、お答えしていきます。

Q1.会社の制度で、「介護休暇」は無給ですが、こうした無給の休暇を取った場合は、どうなるのですか? 無給なのであれば、介護目的の休暇でも、年次有給休暇を使えばいいのでは?

毎月の給与から結構な額が天引きされている保険料だが、女性のライフステージにおいて、保険を活用する機会は実はたくさんある(撮影:編集部)

参照元:http://toyokeizai.net/articles/-/170212?page=4

毎月の給与から結構な額が天引きされている保険料だが、女性のライフステージにおいて、保険を活用する機会は実はたくさんある(撮影:編集部)

A.無給休暇は、休む権利は与えられているものの、お休みを取った日数分の給与はカットされます。年次有給休暇から使うのが賢明ですが、場合によっては使いきってしまうこともあるでしょう。

無給休暇を使わずに「欠勤」となると、一般的に勤怠評価に影響が出ます。無給であっても仕事を休め、勤怠もマイナスにならない点において意味はあると思います。

Q2.傷病手当金や出産手当金を申請するとき、1年間の平均給与でもらえる額が変わってくるということでしたが、賞与も含まれるのですか?

A.賞与は含まれません。支給開始日以前1年間の「標準報酬月額」で算定します。

Q3 .産休を取るときは社会保険料が免除になるということですが、介護で休業するときも免除になるのですか?

A.免除されません。現在、社会保険料の免除が認められているのは、産休と育休期間中のみです。介護休業が無給の場合、給与明細上は支給額がゼロでも社会保険料が徴収されるので、マイナスとなります。

いかがでしたか? 来月分の給与明細が出たときは、今回ご説明した注意点をよくおさらいして、労働に見合った給与が支給されているか、活用できる給付がないか、確認してみましょう。

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佐佐木 由美子:人事労務コンサルタント/社会保険労務士

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