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2017.02.27

本当に痩せたいなら「速く」走ってはいけない|フルマラソンを目指す人なら知っておきたい

東洋経済オンライン

まずは「ゆっくり走る」が正解です(写真:kikuo / PIXTA)

まずは「ゆっくり走る」が正解です(写真:kikuo / PIXTA)

きょう2月26日は第11回目となる「東京マラソン2017」が東京都内中心部を回るコースで開催される。これに限らず、全国で開催されているマラソンレースの様子を見て、「いつかフルマラソンを走ってみたい」「ダイエットのためにランニングを始めようかな」と思っている人もいるかもしれない。

だが、本当に実行に移せるかどうかは別問題。走るのはキツイし、42.195キロメートルという長距離を完走するのは並大抵なことではない。ランニングを始める前には、誰もが思う。しかし、それは大きな誤解らしい。

「ヒトは誰でも、フルマラソンくらいの距離を走る能力は持っているんです」。福岡大学スポーツ科学部教授で『ランニングする前に読む本』の著者、田中宏暁氏がランニングの神髄を明かす。

ランニングの効果を最大限に発揮するには

これまでまったく走ったことがない人でも、コツを押さえて3カ月トレーニングを積めば、フルマラソンを完走できるようになります。それに、ランニングは苦しいスポーツではありません。というよりも、最大の効果を発揮するためには、「苦しいペースで走ってはいけない」のです。

私は肥満や生活習慣病の予防に有効な運動の研究を47年間続けており、運動生理学の観点から導かれた「スロージョギング」という走法を提唱しています。その名のとおりゆっくり走るスロージョギングは、フルマラソン完走を目指すランナーにとっても、ダイエットをしたい人にとっても最適な「最も体に優しいランニング方法」です。

まず、ひざや心臓に負担がかかりません。走るとひざや脚が痛くなった経験がある人もいるかもしれませんが、走り方のポイントさえ押さえれば、脚への負担が抑えられるのです。また、ランニングは心臓に悪いスポーツと思われがちですが、そんなことはありません。もちろん速いスピードで走れば、交感神経が過剰に興奮して拍動数が増え、心臓の収縮力が高まって血圧を上昇させます。

しかし、スロージョギングで提唱する適度なペースを保てば、交感神経を興奮させることがなく、心臓に負担はかからないのです。むしろ血圧を下げる作用もあることがわかっています。

エネルギー消費量はウォーキングの2倍

脂肪を効率よく燃焼させることができるのも体に優しい点です。体が感じるキツさはウォーキングと変わらないのに、エネルギー消費量はなんとウォーキングの2倍。ダイエットにはもってこいの運動といえるでしょう。

(出所)『ランニングする前に読む本』(講談社)

(出所)『ランニングする前に読む本』(講談社)

移動1キロメートル当たりのエネルギー消費量は、時速7キロメートル以上のランニングでも、時速3~6キロメートル程度のスロージョギングでも、体重1キログラムあたり約1キロカロリー。驚くことにランニングの場合、速く走っても遅く走っても、消費するエネルギー量はほとんど変わりません。

一方、時速3~6キロメートルのウォーキングのエネルギー消費量をみると、移動1キロメートル、体重1キログラムあたりおよそ0.5キロカロリー。同じスピードで移動するなら、ウォーキングではなくスロージョギングにしたほうが、約2倍もエネルギーを消費できることになります。

実際にやってみると体感していただけるはずですが、時速7キロメートル以下のゆっくりしたペースであれば、ウォーキングでもスロージョギングでも体が感じるキツさはほとんど変わりません。スロージョギングは、苦しくなく、非常に効率よくやせられる運動なのです。

それでは、スロージョギングの方法を紹介しましょう。ポイントは大きく2つあります。

1つ目は、「ペース」。目安となるのは、笑顔を保っていられるかどうか。このペースは人によって異なりますが、初心者であれば時速3~5キロメートル程度で、歩くくらいの速度です。想像以上に遅いと感じますが、焦ってスピードを上げてはいけません。トレーニングを続けていけば、笑顔を保てるスピードはしだいに上がっていきます。

この笑顔を保てる速度というのは「乳酸がたまらないギリギリのスピード」で、これがフルマラソンを完走するためにも重要です。乳酸がたまればたまるほど、体内に貯蔵されている糖がエネルギーとして消費されてしまいます。体内にエネルギー源として貯蔵できる糖の量は、距離でいえば30キロメートルを走りきれる程度なので、それではフルマラソンは完走できません。

笑顔を保てるぐらいのペースであれば、乳酸がたまらず、体内にたくさん蓄えられている脂肪をうまくエネルギー源として利用できるので、効率よく長距離を走れるようになるのです。

「フォアフット着地」で走る

2つ目のポイントは、「着地」です。何も意識せず走ってみると、かかとから着地している人が多いかもしれません。このかかと着地は、スロージョギングではNG。「フォアフット着地」で走ることが重要です。

フォアフットとは、足の指の付け根あたりのこと。裸足になってその場でジャンプをしたときに、いちばん先に着地する場所がフォアフットです。決して「つま先」ではないという点に注意してください。フォアフット着地がきちんとできていないと、走っていてアキレス腱やふくらはぎなどを痛めることがあります。

かかとの部分が厚底になっているランニングシューズも多いですが、それを履いてフォアフット着地をしようとすると、つま先着地になりやすい。スロージョギングをする際は、底が薄いシューズがお勧めです。

フォアフット着地の最大の利点は、先に述べたように足が受ける負担が小さいことです。米国の人類学者ダニエル・リーバーマンらが2010年に『ネイチャー』誌で発表した研究によると、足が受ける衝撃は、フォアフット着地よりかかと着地のほうが3倍も大きいということがわかっています。

走る速さはピッチ(1秒の歩数)とストライド(1歩の距離)で決まりますが、かかと着地はストライドを伸ばすために生まれた走法。一方、フォアフット着地はピッチを稼ぐ走り方ですが、そのほうが足に負担がかからず故障が少ないと考えています。

背筋を伸ばして立ち、体の軸を一直線に保ったまま前に傾ける。倒れそうになると、自然と足が前に出ますが、それを繰り返していけばフォアフット着地でうまく走れるようになります。地面を蹴るのではなく、自然と足が前に出て軽いジャンプを繰り返していくイメージです。足の力に頼らずに、地面からの反発力を利用して前に進んでいきます。

ピッチは、普段走るよりもだいぶ多くなります。15秒間で45以上を目安とするといいでしょう。

非常に理にかなったトレーニング方法だ

スロージョギングを実践してみると、「本当にこんなラクな運動で痩せられるのか!?」と驚く人も多いですが、これが運動生理学の観点からみても、非常に理にかなったトレーニング方法なのです。

ちなみに「20分以上運動しないと脂肪が燃えない」ということがよくいわれますが、この説に科学的根拠はまったくないといわれています。私たちの体はエネルギー保存の法則に従うはずで、摂取カロリーに対して消費カロリーが多ければ痩せるので、運動の継続時間は関係ありません。


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1分間のスロージョギングと30秒のウォーキングを1セットとし、毎日これを仕事の合間に40セット繰り返したことで、3カ月で7キログラムの減量に成功した人もいます。ちょっとした移動や、オフィスの中でもスロージョギングはできてしまうので、忙しくて走る時間が取れない人でも始めやすいのではないでしょうか。

ダイエット目的で始めても、続けることで自然と筋力もつき、フルマラソンを完走することも可能になります。ダイエットで体が軽くなれば、その分、速く走れるようにもなるでしょう。いつかフルマラソンを走りたいと思っている方のとっかかりとして、スロージョギングはお勧めのトレーニングです。

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田中 宏暁:福岡大学スポーツ科学部教授

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