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2017.02.24

決戦目前!日本一に賭けたボクサーの想い・ユータ松尾さん【元気をつなぐリレーNo.1】

KenCoM編集部

今回より始まる連載「元気をつなぐリレー」では、スポーツや仕事でその道を極めようとしている人、人の健康づくりを支える人などにお話を伺い、その熱い想いを聞いて皆さんに元気をお届けします。

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第1弾は、2月末にタイトル戦を控える現在フライ級で日本ランキング1位のユータ松尾さんにお話を伺いました。試合までの過酷なトレーニングや減量、プロボクサーのしなやかなメンタルに迫ります。

<お話を伺った方>

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■ユータ松尾(ゆーた・まつお)さん
プロボクサーA級ライセンス 2012年8月デビュー
ワールドスポーツボクシングジム所属。現在、フライ級日本ランキング1位

『はじめの一歩』を読んでプロになると決意

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――もうすぐ大きな試合があるんですよね?目標を教えてください。

はい。2月28日に日本タイトル戦を控えています。そこで日本チャンピオンを獲得することが目標です。

――もうすぐですね!そもそも、プロボクサーを目指したきっかけは何ですか?

ボクシング漫画『はじめの一歩』を読んだ時です。確か小学校5・6年だったと思いますが、いとこの家でたまたま読んだら面白くて、「これはもう、世界チャンピオンになろう!」って思いました。中学の頃は自分でパンチを打ったりはしていましたが、高校で本格的にボクシング部に入りました。大学もボクシング部です。

――『はじめの一歩』なんですね!夢がかなった今、ボクシングは好き?

続けていてすごく良かったです。ボクシングは階級制なので体格が小さくても世界を目指せますし、自分に向いているなと思います。
正直、練習に行きたくないときや、試合が怖いときもあります。好きか嫌いかどっちか尋ねられると答えられませんが、世界タイトルを取るまでは続けます。

激しい試合の最中、ボクサーの頭の中は?

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――試合中はどんなことを考えているものなんですか?

どう試合を組み立てるかをすごく考えます。ボクシングは駆け引きのスポーツです。見た感じは分からないと思いますが、ちょっとした距離とか、ポジション、手の位置や体の揺らし方で相手と駆け引きしています。

相手にプレッシャーかけて、徐々に追い込むのが得意ですが、評価されるのは「ブロックが上手い、パンチをもらわない」などですね。ただ、守備が多くなると手数が少なくなるので、最近は守備もしっかり、攻撃もしっかりやります。打ち合ったほうが会場のお客さんも盛り上がるので。

――なるほど。練習の打ち合いも熱いですね!試合で受けるパンチはやはり痛い?

痛いのはお腹ですね。いいパンチをもらうと苦しいです。顔は痛いというより、グラつくので「効くか効かないか」という感じでしょうか。

グローブも、今は練習用で14オンスと大き目ですが、本番は小さく、ヘッドギアもないので顔も腫れますし、頭と頭も結構ぶつかります。

先日初めてここ(右目の上)を切りましたが、試合では集中して痛みに気づかないことも。試合中に選手同士がぶつかると、バッティング(頭を相手にぶつける行為で反則の一種)なのか、ヒッティングなのかアナウンスがあるのですが、「ユータ松尾選手のカットは、バッティングです」と言われて初めて「ええ?切ったんだ」と気づいたくらいです。

――相手を倒した瞬間、手応えはあるんでしょうか。

手応えがある時もありますが、倒したつもりも無いのに「あれ、倒れた?」ということが多いですね。前々回、そんな感じで打っていたら相手が起き上がれなくなって驚きました。
こちらがパンチをもらう時も、意識していると耐えられるのですが、全然意識していない時は効きますね。

――松尾さんの試合を見た人に、どんな声をもらいますか?

友人によく言われるのは普段のキャラクターと試合の時が全然違うということ。はじめて試合を見た時は驚いた、良かった、と言われることが多くて嬉しいです。

プロボクサーの練習と過酷な減量

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――日々の練習はどのような内容ですか?

週に6回ジムに行って練習します。まず、アップを自分でやってからシャドーボクシング、その後はサンドバックを打ったりします。トレーナーがいるのでその次はミット打ち、コンビネーションや距離などの練習です。そしてスパーリングという、パンチを当てても軽めにとどめた実戦さながらの練習をするのが基本的な流れです。

――基本があるのですね。日によって少しずつ内容を変えたりするのでしょうか。

サンドバックでも、何を目的としてやるかで鍛える内容が変わってきます。連打をインターバルでやれば心肺機能の強化になります。また、基本の動きの中で何かひとつ変えることもあります。 パンチの同じストレートでも、外から入れるのと内から入れるのでは違うので、角度やタイミングを変えてみたり。

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――1ヵ月半で10キロぐらい落とすそうですが。減量をしつつ競技もこなすための秘訣は?

そうですね、減量といっても落としっぱなしではなく徐々に行うようにしています。普段食べる量より少なくしていく中で、たまには普通の食事を食べることもありますよ。

フライ級の体重制限は50.8キロで、今(試合の約1ヵ月半前)の体重は60キロくらいです。ここから体力を落とさず減量するために、食事の内容やタイミングはすごく考えます。練習前はしっかりカロリーを摂るようにし、タンパク質は常に摂りたいのでお肉もしっかりと食べます。納豆や卵などはほぼ毎日食べますね。

食事を減らすのは夜がメインです。最初は体脂肪である程度落ちていくんですが、最後の5キロはほとんど水分を出して体重を落とす感じです。

私は、最初に塩を抜きます。そうすると水分が勝手に抜けて喉も乾かなくなります。
カロリーそのものは、結構試合の直前まで摂っているんですよ。計量前はやはり具合が悪くなりますし、トレーニングありきの減量なので一般の方は絶対に真似しないでくださいね。

――ご自分で工夫されているんですね!もう慣れましたか?

毎回どうやったら楽に落とせるのか、これを食べたらどうなのかとか、試行錯誤しますよ。
試合の前の何日かは、対戦より計量で頭がいっぱいになります。試合前日の午後2時ごろが計量で、終わったら何を食べてもOK。なので試合当日は5キロくらい体重が戻りますね。試合が終わったら10キロくらいすぐに戻りますね。

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――減量の期間中に、集中力が高まるのでしょうか?

1ヵ月くらい前からだんだんと、早く終わって欲しいという心境になります。試合の夢も見ます。夢の中ではだいたい勝つんですが、朝起きると「まだ終わってなかった・・・」と落ち込むことも(笑)

でも、なぜか分からないんですが、1週間を切ったくらいからは「自信」だけでいっぱいになります。早く終わって欲しいと思いつつ、いける気がしてくるというか、早く試合したい思いが強くなります。多分減量もキツすぎて最後の1週間は周りのことが考えられなくなるのかもしれません。

だいたいのボクサーは、勝つと「嬉しいというより安心する」と言いますね。「あ、倒れた!終わった!」と思うと同時に、ただただホッとする感じです。

若きボクサーが想うこれからの目標

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――これからやってみたいことはありますか?

日本チャンピオンの次は世界タイトルも目標です。世界には今4団体あるのですが、その団体のランキングうちどれか15位以内に入れば世界タイトルに挑戦する権利があります。チャンスがあれば挑戦したいですね。

今年はいろんな場所に行って、練習もしたいです。一昨年はじめてフィリピンへ練習に行きました。英語は喋れないのですが楽しかった。 フィリピンのボクサーにはパワーがあります。でも日本人の技術のほうがレベルが高いです。

――子どもの体操指導など、教えることもお好きなんですよね。

教えるのは楽しいです。今年は、自分でボクシング教室を開こうと思っています。自分が練習するのと違って、身構えずにできるので教えることで気分転換にもなります。自分の練習と同じ感じで、基本はパンチの打ち方や足の運び方を練習。ミットを持ち合って2人1組でローテーション交代して打ち合い、最後はマスボクシングをやります。

パンチの軌道を見ることで、動体視力も良くなりますし、パンチをタイミングよく受けることも勉強になります。最初は出来なくても全然大丈夫です。最初から上手い人はいないんですよ。

今年は新しいことに、色々とチャレンジしたいと思っています。

――ありがとうございます!タイトル戦応援しています。

――最後に、日本タイトル戦への意気込みを伺うと「いつも通りやるだけです」と、自然体で気負わない言葉が返ってきました。あくまで目標は世界チャンピオン、目の前の試合はその通過点。一歩一歩、大きな目標に向かって地道に努力する松尾さんの言葉にたくさんの勇気をもらいました!――

(取材・文/KenCoM編集部)

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