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2016.11.18

動脈硬化をまねく「食後高血糖」をコントロールするには?

KenCoM編集部

「食後高血糖」は、認知症、がん、心筋梗塞、突然死の原因に

「食後高血糖」とは、糖尿病の非常に初期の段階でみられる「食後のみの一過性の高血糖」です。この段階で動脈硬化は確実に進行。

さらに、認知症、がん、心筋梗塞、突然死といった疾患のリスクも高まることが分かっています。

今回は、10月8日「糖をはかる日記念講演」にて行われた、糖尿病治療の専門家、医師・河盛隆造氏の講演を元に、食後高血糖はどのようにおきるのか?その対策は。そして医師はどのように治療していくのか、というポイントをお伝えしていきます――。

河盛隆造医師 プロフィール

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河盛 隆造(かわもり りゅうぞう)
・順天堂大学医学部 :特任教授
・順天堂大学大学院文科省事業スポートロジーセンター センター長
・先進糖尿病治療学講座 特任教授
・膵再生医学講座 特任教授

「食後高血糖」は諸悪の根源

食後の高血糖はなぜ起こるのでしょう。それは、肝臓がブドウ糖を取り込む機能が低下していることによります。

食後高血糖とはどういった状態か

空腹時は正常範囲でも、食後だけ血糖値が正常の範囲を超える「食後高血糖」は、糖尿病の初期に見られます。
(編集部補足:国際糖尿病連合(IDF)では、食後2時間後の血糖値が140mg/dLを超えないことを推奨しています。)

食後高血糖が続くと、朝の空腹時の血糖値まで120、130mg/dLを超え、そして食後はさらに上がります。結果的にヘモグロビンA1cが6.5~7を超えますと、かなり糖尿病が進行してしまっている状態となります。

動脈硬化だけは「食後高血糖」の時期に、必ず進行する

このような一過性の過剰な血糖値の上昇が起きている時期に、動脈硬化だけは確実に進行します。

動脈硬化をチェックするためには、首の血管にエコーを当てて確認。すると血管にコレステロールが溜まっているか、または血管の壁が厚くなっているかわかります。これは動脈硬化症の程度を表す大事な指標です。

このとき、ヘモグロビンA1cは、まだ正常範囲内の6.2程度でも、同じ年齢の人と比べて20年早く動脈硬化が進んでいると言います。

動脈硬化が進行してくると、心筋梗塞、血管障害が起きます。遠い先のことだと言わず取り返しの無いことになる前に早く手を打つことが大切です。

どのように、食後高血糖はおこるのか

血糖値が上がるたびに、すい臓はフル稼働

例えば、毎日寝る前に果物や甘いものを食べるとするとその都度血糖値は上がります。

すい臓は「血糖値がまた上がってきた…」と、必死でインスリンを作ってたくさん放出。するとインスリンは、ブドウ糖を必死で蓄えようとします。

フル稼働しすぎて、すい臓の細胞がつぶれていく

そして、すい臓が働いてインスリンを作り出している間は良いのですが、過食によって高血糖の状態が続くと、すい臓が疲弊して、いずれ糖尿病になる可能性が高まります。ですので体の調整機能が働いている間に、早く手を打つことが大切なのです。

食後高血糖を改善するための医師のアドバイスは?

現在は、病院での食後高血糖の治療も進歩しており、食生活の指導や、投薬などで速やかに血糖値安定させていくことが出来るようになっています。

透明なジュースはNG!ブドウ糖は直接のまない

まず、ブドウ糖を一気に飲むのはできるだけ避けた方が良いことです。
「飛行機に出てくるりんごジュースはブドウ糖と果糖だけ液体で飲むことになりますので、私でも飲むと一気に血糖値が200mg/dL近くまで上がる可能性があります」(河盛先生)

一方で、りんごを皮ごと食べるとゆっくり消化されて、血糖値は一気に上がりません。糖質を摂る前に食物繊維から食べる、またはゆっくりいろいろなものと一緒に食べるとゆっくりブドウ糖になり、ゆっくり肝臓に流れますので、肝臓はブドウ糖を取り込みやすくなります。

また、医療機関では食前に飲む炭水化物がゆっくりブドウ糖になるようにする薬を処方することも。日本で約200万人以上が使っている薬です。

その他、脂肪肝や肥満を改善して、ブドウ糖が肝臓に取り込まれやすくする。間食をやめて食事前の血糖値をできるだけ下げるように指導する。または肝臓からブドウ糖を放出させるホルモン「グルカゴン」の暴走を押さえる薬の処方など、様々な方向から血糖値をコントロールして、正常に戻していきます。

糖尿病になるとがんになりやすい

糖尿病になると、がんになりやすいというのは、間違いない事実であることが分かっています。

一方で、糖尿病医学会の患者の死因を調査すると、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病は、糖尿病患者でない方より、少なくなっているといいます。糖尿病が進行しないよう、そして他の疾患にも罹らないよう診ていくことで、重症化が抑えられているのです。
がんだけは増えていますが、医師の診断を受け続けることで早期発見がむしろ得られやすいとのこと。

糖尿病の治療は劇的に進歩しており、できるだけ速やかに元の状態に戻れば戻るほど、糖尿病は改善していくということが伝えられました。

食生活、運動不足の見直しを

さらに講演では、糖尿病の発症のピークは30~40代で、また若い女性や働き盛りのビジネスマンにも、食後高血糖が増えているという調査結果が伝えられました。

通常の健康診断では、見つかりにくい「食後高血糖」。食事の食べ方や、運動不足を見直すとともに、ご自身の状態が気になった方は1度病院で相談されることもおすすめします。

(取材・文/KenCoM編集部)

参考文献