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2016.10.21

「高血圧」が健康診断でしつこく指摘される理由とは?

KenCoM公式ライター:守城美和

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健康診断で「血圧が少し高めですね。生活習慣を見直してみてください」や「血圧が基準値を超えています。紹介状を用意しますので病院を受診してください」などと言われたことがある人も多いのではないでしょうか。

今回は「高血圧とはどんな状態なのか」「高血圧が及ぼす危険性」「なぜこんなにも健康診断で高血圧を指摘されるのか」についてわかりやすく解説していきます。

高血圧ってどういう状態のこと?

高血圧の診断基準は140/90mmHg以上であるかどうか

高血圧の診断基準は「日本高血圧学会」によって
収縮期(最高)血圧:140mmHg以上
拡張期(最低)血圧:90mmHg以上
と定められており、どちらか片方だけ超えている場合でも「高血圧」と診断されます。

また上記の基準値を満たしていない場合でも
収縮期(最高)血圧:130mmHg以上
拡張期(最低)血圧:85mmHg以上
の場合は「高血圧予備軍」として、経過観察や生活習慣の改善の対象となることも多いようです。

”血液の量”と”血管の状態”に問題があることが原因

高血圧の原因は
・血液の量が多い
・血管が狭い
・血管が硬い(弾力性がない)
であることが多いとされています。

血管に対して過度な負担をかけてしまうことで、血管の機能が衰え、さまざまな合併症を引き起こしてしまうのです。

高血圧をほおっておくとこんなリスクがある!

高血圧の状態が続くと、血管に負担がかかり「動脈硬化」という血管が硬くなってしまう症状を引き起こしてしまうため、多くの血管が通っている臓器に合併症が起こりやすいと言われています。ここではそんな合併症について見ていきましょう。

脳内出血・脳梗塞・心筋梗塞などで突然死

高血圧は脳卒中(脳内出血・脳梗塞)および心疾患の最大の危険因子といえます。
実際に、2012年に発表されたEPOCH-JAPANという合計約7万人の調査でも、血圧水準と脳卒中・心疾患による死亡率の間に正の相関が見られました。
脳卒中・心疾患による突然死を避けるためにも、高血圧の治療・予防は重要ということがわかります。

腎不全で人口透析

腎臓も高血圧による影響が出やすいと言われています。腎臓の機能が衰えると、老廃物のろ過ができなくなってしまい、体に毒素が溜まっていってしまうため、最終的には「腎不全」を引き起こし”人工透析”が必要となってしまうこともあります。

眼底出血によって視力低下

高血圧が目に影響が出ることもあるといわれています。眼底と呼ばれる部分で出血すると、視力が落ちたり、視野が欠けたり、最悪の場合失明に至ることもあるようです。
高血圧を患った際は、早めに眼底検査も受けることをおすすめします。

健康診断で「高血圧」をしつこく指摘される3つの理由

「健康診断のたびに『高血圧に注意してください』って言われるけど、体は何ともないのになんでこんなにしつこいの?」と思っている人もいるのではないでしょうか。ここではその理由の中でも大きな割合を占める「3つ」の理由について見ていきましょう。

1:自覚症状が出ないまま動脈硬化の症状が進行することも多いため

高血圧による動脈硬化では、よほど重度にならないうちは、体に何の不具合も感じないことが多いと言われています。ただしあくまで「自覚症状」がないだけで、症状はどんどん進行し、突然死に繋がることもあるため”サイレントキラー”という異名がつけられているほどです。

2:他の病気の初期症状である可能性があるため

現在の日本では、高血圧と診断された人のほとんどが、食生活や生活習慣の乱れなどからくる「本態性高血圧」であると言われています。

しかし中には「二次性高血圧」と言って、先天性の病気や既に発症している病気の症状としてあらわれている可能性も考えられます。そのため、健康診断で「高血圧」を指摘されたら、一度病院を受診し、更に詳しい検査を行う必要があるんだそうです。

3:一度なってしまった動脈硬化を治療する方法がないため

一度動脈硬化を起こしてしまった血管を戻す治療法は現在までに確立されていません。そのため「動脈硬化を起こさないための予防」として、高血圧の改善が必要となります。

代表的な高血圧改善方法は次の6つです。

・減塩
・食事内容の見直し
・適度な運動
・ダイエット
・節酒
・禁煙

早いうちからこうした対策に積極的に取り組むことで、血圧を正常値に戻せるように努めたいものです。

ほんの少しの意識だけでも高血圧は改善されます

高血圧の原因の多くは「カロリーや塩分の摂りすぎ」であると言われています。高血圧の本格的な治療が必要となると、1日の食塩摂取量が6g以下になるよう食生活の改善に取り組まなければなりません。
ちなみにこの6g、どれくらいか想像できますか?実はカップラーメンを汁まで完食すれば終わってしまうくらいの量なんです。高血圧が進むと、食事制限も必要になりますし、何より命の危険にさらされます。

しかし、日常の中で、例えば「ラーメンのスープを全部飲むのを止める」「腹八分目で我慢する」など、ちょっとした意識で食い止めることができるかもしれません。健康診断で高血圧を指摘されるのは逆に”チャンス”だと思って、ぜひ今このときから取り組んでみてくださいね。

参考文献

<著者プロフィール>

■守城 美和(かみしろ・みわ)
介護福祉士として、老人・障がい者(児)介護の仕事に携わってきたが、結婚・妊娠を機に離職。現在は「インターネットで検索しても答えがなかなか見つからない」という自身も体験してきたもどかしさを一人でも多くの人に解消してもらえるよう、子育てをしながらWebライターとして活動中。得意分野は”医療”と”福祉”

<監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

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