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2016.10.21

【津下先生のメタボの本質⑨:たばこ】江戸時代に説かれた「たばこの害」

津下一代

自ら病を求め、寿命を縮めてしまう行為が喫煙。しかし「たばこの害」は、古く江戸時代から民衆に語り告がれてきたことでした。それを放置したツケはいま、確実に社会全体に跳ね返っています。
糖尿病・肥満を専門とし、厚生労働省における「標準的な健診・保健指導プログラム」や「運動指針」等の策定にも携わる、あいち健康の森健康科学総合センター・センター長 津下一代先生が、メタボに悩むあなたに知ってほしい基礎知識をわかりやすくご紹介する連載記事です。

江戸時代より、たばこは「自ら寿命を縮める」最有力候補

人は自ら病を求め、天から与えられた寿命を縮めている。貝原益軒の「養生訓」の厳しいお言葉です。食生活、運動、睡眠、気持ちの持ち方、薬との付き合い方のほか、たばこ、酒の害にも触れ、もっと健康でいようよ!と誘いかけます。

益軒が活躍した江戸時代、たばこは広く普及していました。養生訓ではめまい、せきなどへの害を述べた後、「習へばくせになり、むさぼりて、後には止めがたし」と習慣性があり、お金がかかり、家族にも迷惑がかかると言っています。習慣になると自覚症状を感じなくなることも記述しています。

当時は感染症や飢餓などでの死亡が多く、がんや脳卒中への影響は未解明だったようです。現代版の養生訓「健康日本21」では、寿命を縮める最有力候補として喫煙を掲げ、分煙対策の推進、禁煙治療・保健指導に力点を置いています。

コロンブスの新大陸到達時、先住民から贈られたたばこ。英国植民地だった米国で大量栽培に成功し、独立戦争の資金源となりました。日本でも1876(明治9)年にたばこ税が導入され、日清戦争などの財源となりました。後に健康寿命の短縮と医療費増大というツケを払わされることになるとは思わなかったでしょう。

<著者プロフィール>

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■津下一代(つした・かずよ):
あいち健康の森健康科学総合センターセンター長兼あいち介護予防支援センター長(現職)。
医学博士、日本糖尿病学会専門医・糖尿病療養指導医、日本体育協会公認スポーツドクターなどの資格をもち、糖尿病、肥満、スポーツ医学の専門医として活躍。日本肥満学会理事、日本人間ドック学会理事、厚生労働省にて日本健康会議実行委員会委員をつとめ、「標準的な健診・保健指導プログラム」や「運動指針」等の策定に携わる。主な著書に「しなやか血管いきいき血液―健康寿命をのばすために知っておきたい65のはなし」「図解 相手の心に届く保健指導のコツ―行動変容につながる生活習慣改善支援10のポイント」など。その他、「NHKきょうの健康 コレステロール・中性脂肪対策のごちそう術」の監修も務める。

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