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2016.10.11

過度な糖質制限に待った!糖質はどのくらい摂るべき?【栄養士鼎談】

KenCoM編集部

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糖質制限ダイエットが流行する昨今、極端な糖質カットはNGと言われる一方で、自己流のダイエットに失敗するパターンも多いと聞きます。いま「糖質制限ダイエット難民」が増える中で、改めてダイエット中の糖質の意味を問う、栄養士による鼎談が先月のダイエット&ビューティーフェアにて開催されました。

登壇したのは、イベントをコーディネートする管理栄養士の伊達友美さん、ゲストに健康料理研究家・栄養士のマリー秋沢さんと、管理栄養士の前田あきこさんです。若い女性に多い低血糖の話や、ストレスと血糖値など、男女それぞれの糖質と不調、そして最低限摂るべき糖質量の目安についても語られました。

いま糖質とどのように向き合えばよいのか、3人のお話からそのヒントを紐解いていきます。

血糖値スパイク(乱高下)が、不定愁訴の原因に?

左から、伊達友美さん、マリー秋沢さん、前田あきこさん

左から、伊達友美さん、マリー秋沢さん、前田あきこさん

まずは、血糖値と女性の健康問題についてのお題。

「クリニックに来院される女性の方には、なんとなく調子が優れない、気分が落ち込むなどの症状で、婦人科を受診するのだけど、何も異常がないという方がおられます。
こういう症状は『不定愁訴』と呼ばれるのですけど、その患者さんに内科で診療を受けてもらうと、必ずといって良いほど『低血糖』の症状がみられます」(前田さん)

女性を総合的に診る「女性ライフクリニック新宿」でダイエットカウンセリングを行う前田あきこさんから、女性の「低血糖」の問題が指摘されました。

低血糖の女性にありがちな血糖値の上昇パターンについては、以下のように語ります。

「低血糖の方に多いのが、血糖値がバーンと上がったかと思えば、血糖値が一気に下がって、血糖値が上がったり下がったり、いわゆる血糖値スパイクの状態が続いていること。血糖値の乱れが、自律神経の乱れを招いて体調に影響しています」(前田さん)

血糖値を乱す「飲み会」で、食べすぎないワザとは?

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女子会について、食生活を乱す要因になる一方でその場では思いっきり楽しんだ方が健康的、という意見には皆さんが納得。

楽しみつつ飲み過ぎない心得として、
「まじめな人に限って、飲み会で勧められるままに飲んでしまうことが多いですよね。私もそうだったんですが、最近は飲まなくてもいいんだと割り切って気をつけています」とご自身のエピソードを語るマリー秋沢さん。

ひと口お酒を飲んだら、つい2杯3杯飲みすぎてしまうことについて、
「2杯目以降は誰が何を飲んでいるかなんて皆わからないんですね。なので、炭酸水にライムを入れてもらってジントニックに見せるのもおすすめです。また、ウーロン茶を頼むと目立つけど、お水を頼んでいると目立たない」(前田さん)
と、雰囲気を壊さず、飲みすぎを避ける方法を伝えました。

飲まないと、つい食べ過ぎてしまう時には、
「行動療法を用いて、料理の“取り分け”に専念すると、手持ち無沙汰がなくなるのでおすすめです」(前田さん)

飲み会は無防備に行くのではなく、覚悟とテクニックが必要というわけです。

男性は、出世ストレスで血糖値が一気に上がることがある

男性に多い血糖値の乱れの原因は、食習慣だけではないとの指摘もありました。
「男性は出世して部署が変わったタイミングなどで、それまで正常だった血糖値が一気に上がることもあります。そういう方に限って、食生活は完璧といっていいほど健康的。これには、血糖値コントロールと、ストレスに関するホルモンが同じ副腎から出ていることが関連していると考えられます。ストレスを避けることは食事と同じくらい大切です」(前田さん)

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1日に最低限食べたほうがいい糖質量は?

糖質は最低でも1日100gは摂って欲しい

では、糖質は最低限どれくらい摂っていれば良いのか?という質問について、こんな話が出ました。
「お茶碗に軽く1杯、1食40gを目安に1日100~120gは最低限摂ってほしいと思います。全身のエネルギーのためにも糖質は必要です」(前田さん)

極端な糖質制限は2ヶ月が限界

そして、最近増えている「糖質を極端にカットする糖質制限」は、どのくらいで限界が来るか?については、

「現場の感覚として、2ヶ月が限界だと感じます。腸内の善玉菌のエサは、糖質でしか補えないので」(前田さん)
「糖質を減らしすぎて、逆にお肉ばっかりのメニューに偏って大腸がんにでもなったら元も子もないですよね。」(伊達さん)

そして、糖質制限ダイエットを終えたら、次に何をするか目標を決めておくことも大切だということ。

糖質制限との向き合いかたは、自分の身体を知ることから

今回のイベントでは、糖質の大切さと、糖質との向き合い方についてたくさんのヒントを得られました。

イベントの後半で、「炭水化物の旧称が『含水炭素』であったように、炭水化物は水分を含んでいます。炭水化物を減らせば水分も抜けるため体重は減りますが、まずは今ご自身がどういった状態なのか、見極める必要がありますね。体力がない状態で糖質制限をしても、健康に影響が出てしまいます。緩やかに現状維持したいのか、それとももっと上を目指すのか」と伊達さんはまとめました。

そして、マリー秋沢さんからは、最新の糖質オフレシピの紹介もあり、一品の糖質量20g程度のメニューが満載。集中して糖質制限を行うときに役立ちそうです。

糖質コントロールはこれからのダイエットのスタンダードになっていくでしょう。しかし、体質も、健康状態も、人それぞれ。自身の身体をよく知って糖質を調整していくこと、そして糖質制限ダイエットが終わったら、次は運動をして筋肉をつくるなど、長期的に目標を考えておくことが必要と言えそうです。

(取材・文/KenCoM編集部)

<監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

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