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2023.02.03

新型コロナ感染後、脂質異常症のリスクはどう変わる?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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新型コロナ罹患後は、さまざまな病気のリスクが高くなることがわかっていますが、コレステロールや中性脂肪などとの関係はあるのでしょうか。

今回ご紹介するのは、Lancet Diabetes & Endocrinology 誌に2023年1月6日掲載された、新型コロナウイルス感染症罹患後の脂質異常症リスクについての論文です。
  

▼石原先生のブログはこちら

新型コロナと脂質異常症のリスクの関係を検証

新型コロナウイルス感染症後に、その急性期を過ぎても、心血管疾患や糖尿病のリスクが増加するというのは、これまでにも何度もご紹介している知見です。

今回はコレステロールや中性脂肪の血液中の異常である、脂質異常症のリスクと、新型コロナウイルス感染症との関連が調査されています。

アメリカの退役軍人の健康保険データを活用して、新型コロナウイルス感染症に罹患し、30日以上生存した脂質異常症のない51919名を対象。年齢などをマッチングさせた、非感染の2539941名のコントロール群と比較して感染の急性期以降に脂質異常症を発症するリスクを検証しています。

脂質異常症のリスクが有意に増加

その結果、非感染群と比較して、新型コロナ感染後1年の時点での脂質異常症のリスクは、総コレステロールが200㎎/dLを超えるリスクが1.26倍(95%CI:1.22から1.29)、中性脂肪が150mg/dLを超えるリスクが1.27倍(95%CI:1.23から1.31)、善玉とされるHDLコレステロールが40mg/dLを下回るリスクが1.20倍(95%CI:1.21から1.27)と、いずれの指標でも有意に増加していました。

これはおそらく糖尿病の増加などの現象と、同一の要因から生じている可能性が高く、隔離などによる運動量の低下や、後遺症と呼ばれるような長期の体調不良、ウイルス感染に伴う炎症の持続や、凝固、免疫の異常など、様々な要因が想定はされますが、現状正確な原因の特定には至っていません。

罹患後は心血管疾患のリスクが高いことにも注意

いずれにしても、新型コロナウイルス感染症罹患後には、その後1年もしくはそれを超える期間において、心血管疾患のリスクが増加することはほぼ間違いがなく、その予防などの介入が、今後有効に行われることを期待したいと思います。

記事情報

参考文献

著者/監修医プロフィール

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36