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2022.12.02

メタボってなんだ?メタボを改善する食事テクニック【後編】

kencom公式:管理栄養士・前田 量子

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前回はメタボ(メタボリックシンドローム)の定義や、何故悪いのか、運動の目安についてご紹介しました。前回の記事でご説明した通り、血糖値を急上昇させる食生活は、メタボの原因になることがわかっています。今回はメタボを改善するための食事がテーマです。

メタボを改善する食事のテクニック

ポイント1:主食は適正な量を心がける

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体内に脂肪が蓄積されるメカニズムにインスリンの過剰分泌があります。近年ではインスリンがあまり良い印象ではない書き方をされがちですが、インスリンは血糖値を安定させてくれるとても大切なホルモンです。問題があるのは、血糖値を急激にあげてしまう糖質を多く含んだお米やパンなど主食を食べすぎてしまうことです。

性別・年代別の適正な白米量/1食あたり

性別・年代別の適正な白米量/1食あたり

例えば健康で減量の必要がない、働いている(通勤あり)成人の男性の場合、間食・飲酒がなければ、適正な白米の量は1食あたり250g程度です。この場合、ご自身の体重によりますが、無理せずに1カ月に1kgの減量を目指すなら、1日当たり240kal、1食あたり80kcalを減らす必要があります。白米は、50gで84kcal(※)ですので、1食あたりごはんは200g(-50g)を目安にすると良いでしょう。

間食をしている場合は200kcalまでと決めて、ごはんは150g(-100g)に調整しましょう。

※日本食品標準成分表2015年版(七訂)参照

ポイント2:最初のひとくちは野菜から

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血糖値を急激にあげないようにするには、食べる順番も大切なポイントです。空腹時、最初に糖質を多く含む主食を口にすると血糖値があがりやすい傾向にあることが分かっています。

まず、最初のひとくちには、サラダやおひたしなどの野菜類を。次に、お肉や魚等のたんぱく質食材のものから食べましょう。野菜に含まれる食物繊維が糖質の吸収を遅らせるため、血糖値上昇が緩やかになります。主食は後半に食べることで、食べすぎ防止になります。

ポイント3:ひとくち30回噛む

食事にかける時間も大切なポイントです。人間の脳は食べ始めてから15分〜20分後に満腹中枢が働くと言われています。噛んで食べることで食事時間が長くなるため満腹中枢が刺激をうけて食べすぎを防止してくれます。

e-ヘルスネット 
速食いと肥満の関係 -食べ物をよく「噛むこと」「噛めること」/ 食べる速さとBMI(Body Mass Index)の関係

参照元:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-10-002.html

e-ヘルスネット 速食いと肥満の関係 -食べ物をよく「噛むこと」「噛めること」/ 食べる速さとBMI(Body Mass Index)の関係

厚生労働省のe-ヘルスネットによると、速食いの人はBMIが高い傾向で、20歳時点からのBMI増加量も高いことがわかっています。速食いは百害あって一利なし。ひとくち30回を目標に、しっかりと噛んでください。

ポイント4:1食あたり野菜120gが目標

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食事制限中、辛いと感じるのは空腹感ではないでしょうか。ポイント2では、血糖値の上昇を緩やかにしてくれるものとして食物繊維をあげましたが、食物繊維は空腹感を和らげてくれます。

食物繊維は”人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体”と定義されており、以前は”食べ物の役に立たない部分”と考えられてきました。しかし、近年では研究が進み、食物繊維摂取量と主な生活習慣病の発症率または死亡率の関連を検討した疫学研究のほとんどで、負の相関(摂取量が多い方が発症率・死亡率が下がる)が見られる貴重な栄養成分であることが分かっており、”第六の栄養素”と言われるほどになっています。(※参考1)

食物繊維は不溶性と水溶性の2種類があり、特に水溶性の食物繊維は腸内で水を抱え込み粘着性のゲル状成分となり胃腸内をゆっくり移動するたため、お腹がすきにくく、空腹を防ぐ効果があります。また、胆汁酸やコレステロールを吸着し体外に排泄する作用もあるため、脂質異常症(高脂血症)の予防も期待されています。

水溶性食物繊維には、ペクチン(果物、特にりんごや柑橘類の皮・野菜全般)、アルギン酸(昆布・わかめ)、グアガム(ある種のマメ科の植物)などがあります。

わかめや野菜は低カロリーで沢山摂取しても高カロリーになるリスクは低いので、かさまし食材として活用するのがおすすめ。肉だけを焼くよりも、野菜をたっぷり加えて、肉野菜炒めにすればボリュームアップ&噛み応えアップで、満足感を得ながらカロリーカットして、食べすぎ防止につながります。

1食にとりいれて欲しい野菜は最低120g。実際に測ってみると、意外と多いことに気がつきます。最初は、その分量に慣れるためにも量りで、きっちり120gの野菜を量ると良いでしょう。

ポイント5:たんぱく質をしっかり摂る

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食事制限中はカロリーをおさえるため、肉や魚などのたんぱく質も控える方がいらっしゃいますが、おすすめできません。

痩せるメカニズムは、摂取したカロリーよりも、消費したカロリーの方が上回ったとき、体に蓄えられていた脂肪をエネルギーとして使うから。しかし、脂肪を使うとともに、筋肉中のたんぱく質も分解しエネルギー源となってしまいます。そのため食事制限中は筋肉量が減りやすくなるといわれています。

筋肉が減少すると、基礎代謝が低下し、消費カロリーも減少し、結果太りやすい体になってしまうというわけです。減量しているのに、逆に太りやすくなってしまうなんて本末転倒。ですから、筋肉のもととなるたんぱく質はしっかり摂って筋肉を減らさないように心がけましょう。1日の摂取目安は、自分の体重にgをつけたくらいです。60キロの方なら60gを目安にしましょう。

ここで注意していただきたいのが60gは、肉や魚などのたんぱく質を含む食材の重量ではなく、純粋なたんぱく質として、必要な量が60gであるということ。では「60gのたんぱく質を摂るにはどれくらいのものを食べれば良いの?」となりますが、肉や魚であれば、これに5をかけると食品重量になります。例えば「60gのたんぱく質をお肉で摂りたい」という場合は60g×5=300g。300gのお肉を摂ればよいです。

また、たんぱく質はごはんや野菜にも含まれますから、全てをたんぱく質食材で摂ろうと思わなくて大丈夫です。ほかにも、納豆や豆腐等の大豆製品、卵、魚等、色々な食材から摂るようにしましょう。そうすると自然とビタミンやミネラルもバランスよく吸収できます。

食材によって含まれるたんぱく質の量が違うため、厳密に計算するのは難しいと感じる方も多いでしょう。私はよく「1日に色々なたんぱく質食材を組み合わせて300g、特に豆腐を積極的に」とお伝えしています。そうするとちょうど良い量のたんぱく質になることが多いためです。

ポイント6:3食きちんと&夜遅くの食事は控えめに

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食事制限を行うと、欠食すればその分カロリーを摂らなくてすむという理由で朝食を抜く方もいらっしゃいますが、それはあまりおすすめしません。食べない時間が長いと身体が飢餓状態となり、入ってきた糖質を急いで吸収し脂肪として蓄えようとするからです。

また、朝食には1日のリズムを整える働きも。朝食を抜くと、食事時間以外にお腹が空いて間食をし、それがダラダラと続くこともあります。栄養素がしっかり入っているバランスの良い朝食を食べて、間食をしない方がずっと体に良いのです。

仕事が忙しい働く世代に気をつけて欲しいのは、遅すぎる夕食です。夜は活動が下がりますので、余剰分は脂肪として蓄えられます。さらに、代謝を促進し脂肪燃焼に役立つ成長ホルモンの分泌を妨げる恐れも。遅くても20時には夕食を食べ終わるように調整しましょう。

コツコツ健康的な食生活を積み上げよう

将来ずっと健康でいるためにもメタボリックシンドロームに気をつけたいもの。内臓脂肪は生活習慣病のリスクを高めたり脂肪肝の引き金となったりするため少ない方が良いのです。内臓脂肪は比較的落としやすい脂肪とされています。前編・後編でお伝えしたことを少しずつ実践していけば、即効性はなくても長期的には確実に効果が出てきます。

まずは、主食の量を見直すところからはじめてみてはいかがでしょうか。

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引用・参考文献

著者プロフィール

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前田量子
管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、電子レンジの加熱時間や法則を書いた『ロジカル電子レンジ調理』が2022年2月に発売。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

制作

文・レシピ:前田量子

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