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2022.04.21

大腸がん検診は「便潜血検査」と「内視鏡検査」のどちらが有効?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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大腸がん検査には「便潜血検査」と「内視鏡検査」の2種類がありますが、検査の有効性にどのくらいの違いがあるのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、the Lancet Gastroenterology & Hepatology誌に、2022年3月24日ウェブ掲載された、大腸がん検診の方法についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

大腸がん検査をするならどの方法が有効か?

大腸がんはスクリーニングの有効性が確認されている、数少ないがんの1つです。

便の潜血反応の検査と大腸内視鏡検査(S状結腸までの検査を含む)の、それぞれを単独で施行するか、組み合わせて施行することで、一定の有効性があることが、これまでの多くの臨床試験において確認されています。

ただ、たとえば大腸内視鏡検査と便潜血検査を、直接比較したようなデータは、実際にはあまり存在していません。

27万人超の検査結果から有効性の差異を調査

今回の研究はスウェーデンにおいて、60歳の住民を1回のみの大腸内視鏡検査による検診と、2年間隔での2回の便潜血検査による検診、そしてコントロールの3群に分けて、その後の経過を検証しています。

トータルで278280名のデータを解析したところ、大腸ファイバーを施行した31140名のうち、0.16%に当たる49名と、便潜血を施行した60300名のうち、0.20%に当たる121名に大腸がんが発見されていて、その発見率には有意な差はありませんでした。

一方で前がん病変の高リスクの腺腫の発見率のみで比較すると、その発見率は便潜血群より大腸ファイバー群において、1.27倍(95%CI:1.15から1.41)有意に高くなっていました。

肛門から距離のある右側の大腸のがんについては、大腸ファイバー群でより多く診断されていました。

どちらもほぼ同様の有効性

このように、個別の特徴はもちろんあるものの、大腸内視鏡検査を1回のみ施行する方法と、便潜血検査を期間をおいて2回施行し、陽性の対象者で大腸内視鏡検査を施行する方法は、どちらもほぼ同様の有効性があると、そう考えて大きな誤りはないようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36