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2022.05.13

幅広麺で具だくさん!小麦大国・群馬県の「おっきりこみ」【ニッポン地元メシ#20】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

日本列島のほぼ中央にあり、「日本の真ん中」とも言われる群馬県。
草津、伊香保、みなかみ、万座…と質の良い温泉が豊富で、温泉地の数は96、源泉数は453もあるのだとか。

群馬県といえば、標高10~1400mに耕地が広がり、その標高差を利用して様々な野菜が年間を通じて生産されています。
嬬恋の高原野菜や下仁田ねぎといったブランド野菜はご存知の方も多いと多います。
首都圏へのアクセスが良く、おいしい野菜を新鮮なうちに届けられることから、都内近郊のスーパーでも群馬県産野菜が多く提供されています。

第20回は、群馬県の美味しい食材がぎゅっと詰まった郷土料理「おっきりこみ」を紹介します。

「おっきりこみ」とは

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「おっきりこみ」は、初めて聞く方も多いかもしません。

小麦粉で練った麺に、季節の野菜やきのこなどの食材をたっぷりと加えて煮込んだ料理で、「おきりこみ」や「にぼうとう」とも呼ばれています。
うどんと比べると幅広で、ひらひらとしたリボン状の麺が特徴的です。
日常的に親しまれ始めたのは、石臼が庶民に広まった江戸時代中期頃からと考えられています。

ちなみに群馬県は1年を通じて天気が良く、水はけのよい田んぼ、冬場にふく乾燥した「からっ風」という特徴から、全国トップクラスの小麦の生産地。
そのため、おっきりこみ以外にも焼きまんじゅうや水沢うどん、ひもかわうどんなど小麦を使った名産が多くあります。

麺に切り込みを入れることが由来

「おっきりこみ」という名前は、特徴的な麺の作り方からきているといわれています。

小麦粉(中力粉)を水とあわせて生地を作り、伸ばした後に麺棒にくるくると巻き付けます。それから麺棒に沿ってスーッと「切り込み」を入れて開き、端からお好みの幅(うどんよりも広めの2~3cm)に切って完成です。
この「切り込み」を入れる作業から「おっきりこみ」といわれるようになりました。

麺を別で茹でるのではなく、切ったそばからどんどん鍋に入れて野菜と一緒に煮ていくことから、昔も今も食事の支度はパパっと手軽にできるものに需要があったのかもしれませんね。

「おっきりこみ」の作り方

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麺の作り方は前述の通りですが、実は他にもうどんとは大きく違う点があります。

通常うどんを作るときは塩を加えてこねるのですが、おっきりこみには塩を入れません。
また、うどんはいったん茹でてからほかの食材と合わせますが、おっきりこみは塩の入っていない生地を切り、そのまま鍋に投入するため煮込むことで煮汁にとろみがつきます。

ねぎ、にんじん、きのこ、ごぼう、里芋などのお好みの野菜を出汁で煮て、その後、麺を加えて煮込みます。ご家庭によっては油揚げや豚肉や鶏肉を加えることもあります。
味つけは醤油ベースが多いようですが、味噌ベースや醤油と味噌が半々など、お店やご家庭によって味付けは様々です。

作って嬉しい、食べて美味しい!おっきりこみの栄養

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作る側にも食べる側にも嬉しいのが、具沢山の鍋料理!

メインの麺には小麦粉が使われていますが、小麦粉には脳や身体のエネルギー源となる炭水化物が含まれます。
また、たっぷりの野菜には腸内環境を整えるのに役立つ食物繊維が含まれます。

にんじんやネギの青い部分にはβ-カロテンという抗酸化作用を持つ成分も含まれますし、肉や油揚げなどを加えることでタンパク質もプラスできます。
味付けを味噌ベースにすれば、発酵食品のパワーもしっかりと摂り入れることができます。

さらにポイントは「汁もの」であること。
野菜に含まれるビタミンCやカリウムといったビタミンやミネラルには、水に溶け出す性質のものがあります。おっきりこみは汁ごといただけるので、溶け出た栄養素も摂取できます。

鍋料理は鍋だけで作れて、お皿は取り皿だけでOK。洗い物も少ないというのは作り手にとって助かるポイントのひとつではないでしょうか。

パパッと作れて栄養豊富、現代人にもぴったり

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冷蔵庫の残り野菜を使い、パパっとできて1皿で栄養バランスが取れるおっきりこみ。
現代でも変わらず愛され続けているのは、忙しい現代人の生活にもマッチしているからかもしれません。

「ニッポン地元メシ」過去連載はこちら

磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)

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管理栄養士・料理家
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

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