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2022.01.14

ストレスは万病の源【笑トピ・#5】

明治大学名誉教授・日本笑い学会:山口政信

誰にでも身近な言葉「ストレス」

ストレスは便利な言葉です。仕事上の案件でも健康上の事柄であっても、明確な答えが出ないときには、「それはストレスですね」と言っておけばその場は繕えます。誰しも思い当たる節があることから、「ほんと、ストレス」と分かったような返事をするものですが、その後には漠とした不安が残ります。この寄る辺なさがストレスなのですが、宙ぶらりんの浮遊感も捨て難いことから、個人の解釈に依存する事項だと言わざるを得ません。

「風邪ですね」と言われれば「ああ風邪か」と、ひとまず安心するように、今やストレスは風邪と同じ感覚で捉えられています。事実、ストレスは「万病の元」である風邪の一要因といわれますから、《ストレスは万病の源》と書いても可笑しくはないでしょう。

これほどに日常語として定着しているストレスですが、つまるところ頭で理解できても、肚で納得するまでには至っていないのが実状だと感じています。それは性懲りもなくストレスを溜め込み、慢性化への道を歩んでいる日々を振り返えれば明らかです。

自分の心の状態を確認する習慣を

「分かっちゃいるけど止められない」のは人間の性でストレスの因子ですが、その初期症状は〈何となく〉が共通語になりそうです。ストレス指標の一つとなるこの感覚は、縦軸を体調とし、横軸に気力をとり、現状はゼロの交点からプラス/マイナスのどの辺りに位置するのか、ということをアバウトに掴んでおけば、大きなトラブルは回避できます。

身体がだるい、無性に食べたい・飲みたい、しゃべりたくないが文句は言いたいなどの症状や現象があれば、身心ともにマイナスですから要注意。しかし、たとえこのような時であっても、最近は笑っていないなーと気づけば、プラスへの展望が開けるものです。

人それぞれの予兆はあると思います。私の場合は頭の重さで〈中身は軽いのに頭が重くて〉と笑いのネタにすることもあります。また機嫌の善し悪しを量る目的から、鏡に映る自分と向き合うことを朝の洗面時に励行しています。「べー」と言いつつ口を大きく開けて舌を出す、頬を擦る、耳を引っ張るなど仕草の後、いない・いない・バーで仕上げます。とても人には見せられませんが、面倒だと感じた日の言動には慎重を期しています。

ここまでストレスとは何か、という説明もせずに世間話でお茶を濁してきたことから、ストレスが溜まったことでしょう。そこでお詫びの印に、静岡県を流れる大井川に架かる「蓬莱橋」のWeb探訪をお勧めしたいと思います。厄がとれて、長生きできるかもしれません。

著者プロフィール

■山口 政信(やまぐち・まさのぶ)
明治大学名誉教授
1946年生まれ。東京教育大学体育学部卒業・東京学芸大学大学院教育学研究科修了。日本笑い学会理事、日本ことわざ文化学会理事(事務局長)、スポーツ言語学会初代会長。全国中学校放送陸上競技大会80mハードル優勝(中学新)、日本陸上競技選手権大会/メキシコ五輪最終選考会400mハードル6位、フルマラソン完走121回。「創作ことわざ」に「わざ言語」の機能を見出し、体育・スポーツ教育を実践。学生には「体育を国語でやる先生」と呼ばれる。明治大学リバティアカデミーに「笑い笑われまた笑う」を開講し、笑ってもらうことをモットーとした。主著に『スポーツに言葉を』(単著)があるほか、『陸上競技(トラック)』・『笑いと創造第四集』(以上共著)、『笑いとことわざ』(共編著)、『世界ことわざ比較辞典』(共監修)など多数。

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