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2021.12.03

冬の富山の風物詩!氷見寒ぶりを丸ごと味わう「ぶり大根」【ニッポン地元メシ#10】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

世界遺産に登録された「五箇山」がある富山県。合掌造りに田んぼのあぜ道、五箇山には昔と変わらぬ景色が残っており、今も人々が暮らしています。
昔と変わらない暮らしを感じられる美しい里山は、まさに日本の原風景そのものと言えますね。

このほかにも富山県といえば、和紙作りや国の無形文化財に指定されている「こきりこ」、「麦屋節」といった民謡などの多くの文化が存在します。

そして、富山県は日本海に面していることから海の幸が豊富なのも特長です。
第10回は、海の恵みを豪快に使った「氷見のぶり大根」を紹介します。

ブランド魚「氷見寒ぶり」

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「氷見(ひみ)」は富山湾の北西部に位置する漁港。石川県の能登半島に囲われていることもあり、とても良い漁場として有名です。

ぶりは回遊魚のため1年中獲ることができますが、特に冬場に獲れるぶりは「寒ぶり」と呼ばれ、中でも氷見で獲れるものが「氷見寒ぶり」という名でブランド化されています。
重さ6キロ以上で脂ののったぶりが安定して出荷できる見通しが立った時に、氷見漁協から「ひみ寒ブリ宣言」が出され市場に出回ることで、品質を保っているのです。

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晩秋~初冬にかけて、富山湾には地響きのような雷鳴とともに強風が吹き荒れますが、この荒天によってぶりの南下を防ぎ漁獲量が確保できるため、「ぶり起こし」と呼ばれているそうです。

定番「ぶり大根」を贅沢に寒ぶりで!

ぶりといえば、ぶりしゃぶにアラ煮、ぶりなます、ぶりのエラの唐揚げと氷見では数多くのぶり料理がありますが、何といっても定番の「ぶり大根」は欠かせない1品です。

ぶり大根は全国的に有名な料理でもありますが、特に冬の時期、脂ののった氷見の寒ぶりと冬場に旬を迎える大根を使うため、より季節を感じられる料理になります。

作り方のポイントは「臭み取り」

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作り方のポイントは、ぶりのアラを一度熱湯にくぐらせること。こうすることで臭みの原因となる血合いやぬめりを取り除くことができます。

大根は厚切りにして十文字に隠し包丁を入れておきましょう。ひと手間ですが、この隠し包丁で火の通りと味染みがよくなります。
また、大根は葉に近いほうが甘みが強いため、煮物には先端よりも葉に近いほうがおすすめです。先端は繊維も多く辛味が強いため、すり下ろして大根おろしとして使うとより美味しくいただけます。

材料の下ごしらえを終えたら、水、酒で大根とぶりを煮ていきます。大根が柔らかくなったら、醤油やみりん、塩や砂糖を加え味が染み込むまで煮こむだけ。
生姜を加えると、臭みがとれる上に風味付けにも役立ちます。

お鍋一つでできて調味料もシンプルなのがぶり大根の特徴。

ぶりの切り身を使う場合はさっと煮る程度で食べられますが、アラをしっかりと煮込めばよりうま味が溶け出て美味しくなります。

囲炉裏があるご家庭では冬場のごちそうとしてコトコト煮込んでいたと思うと、季節を感じる家庭料理だったことがうかがえますね。
ご家庭によって味噌で味付けをすることもあるそうですよ。

嫁ぎ先にぶりを1本贈る習慣も

氷見では結婚した年のお歳暮に、家族繁栄を願ってお嫁さんの実家から嫁ぎ先に上等な寒ぶりを丸々1本贈るという風習があります。
これを「嫁ぶり」といい、いただいた方はその半身を実家にお返しする「半身返し」を行います。
家と家の結びつきを表現するため欠かせない大切な食材として親しまれていたのですね。

また、ぶりは成長に伴って名前が変わる「出世魚」であることも縁起物として親しまれる理由のひとつです。

ぶり大根の栄養価

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旬のぶりは「脂がのっている」のが特徴。ぶりの身は100gあたり222kcal、タンパク質は22gと、寒さを乗り切るために必要な栄養素がしっかりと含まれています。

そして、ぶりは青魚の仲間ですので、良質な脂質が多く含まれることがポイントです。
なかでも脳機能を助けるDHAや、コレステロールの調整に役立つEPAなどの必須脂肪酸が多く含まれています。
ぶりを丸ごといただけるぶり大根は、栄養を余すことなく摂れる料理と言えます。

大根は味が染み込みやすい食材なので煮物に最適。うま味をしっかりと吸い込んでくれるので、ぶりとの相性抜群です。また魚介類には含まれない食物繊維も摂ることができます。
この時期の大根は葉付きのものも多く出回っているため、葉を塩ゆでしてぶり大根に添えると、ビタミンCやβカロテンといった免疫力アップに役立つ栄養素も一緒に摂ることができてオススメです。

ホクホクのぶり大根、召し上がれ

今年の冬はぜひ旬の寒ぶりと大根をじっくりと煮込んで、味が染みてホクホクと温かいぶり大根で身体の芯から温まってみませんか。

「ニッポン地元メシ」過去連載はこちら

磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)

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大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

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