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2021.10.22

秋に食べたい食物繊維たっぷりおやつ!熊本県「いきなり団子」【ニッポン地元メシ#7】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

全国47都道府県の、美味しくて身体に良い郷土料理を紹介する本企画。

第7回は、ゆるキャラ「くまモン」でおなじみの熊本県です。

火の国・熊本県

世界有数のカルデラを誇る阿蘇山があることから「火の国」とも呼ばれる熊本県。
名所といえば、日本三名城に数えられる「熊本城」が有名です。2016年に起きた熊本地震では天守閣や石垣、重要文化財の建造物など多くが被害を受けましたが、およそ20年をかけて城全体の再建を目指しています。

グルメでは熊本ラーメンやからし蓮根、馬肉やトマト、鮎、焼酎とさまざま。お酒に合うグルメが多いかもしれませんね。
そんな数ある熊本グルメの中から、今回は昔から親しまれているおやつ「いきなり団子」を紹介します。

ボリューム満点おやつ「いきなり団子」

熊本県の郷土菓子として親しまれているいきなり団子。輪切りにしたさつま芋と小豆あんを、練り餅(または小麦粉を水や塩とあわせて練り、薄く伸ばした生地)で包んで蒸したボリューム満点のお団子です。
阿蘇山のふもとではさつま芋が多く栽培されていたこともあり、昔からおやつとしても親しまれていました。

戦後は砂糖がとても貴重ということもあり、甘みの強いさつま芋がおやつとして登場していました。しかし、蒸したさつま芋ばかりでは飽きてしまうため、小麦粉を使った生地で包んだことがいきなり団子の始まりともいわれています。

どうして”いきなり”なの?

馴染みのない方にとっては、インパクトの強いネーミング。
この名前がつけられたのには諸説あります。

1つはいきなり(急に)お客さんが来た時でも、身近な材料で手軽に作ることができるからという説。「いきなり」というのは熊本の方言で「カンタン」や「手軽」という意味があり、それも含めてこの名前になったともいわれています。

また熊本県の一部地域では、片づけが苦手な人のことを「いきなりな人」というところから転じて、ざっと作れるという説もあるようです。

【栄養】腸活のおともに。成長期のエネルギーチャージにも◎

材料がシンプルないきなり団子。おやつとして食べられることが多いですが、実は身体に嬉しい栄養素がしっかりと含まれています。

まずはさつま芋。食物繊維が豊富なことから、近年腸活の強い味方としても親しまれている食材のひとつです。
さつま芋(皮なし・生)100gあたりのエネルギーは126kcal、脂質は0.2gととても控えめです。洋菓子ではバターや生クリームなど脂質が多い食材と一緒に使われることが多くエネルギーが高くなりがちですが、それと比べるといきなり団子はとてもヘルシー。体型管理をしたい人の間食としてはおすすめです。

むくみ予防にも役立つカリウムは480mg含まれており、これはカリウムが豊富といわれるバナナよりも多い数値です。

美容と健康に欠かせないビタミンCは29mg含まれています。ビタミンCは熱に弱い栄養素ですが、さつま芋のビタミンCはでんぷんに守られていることから加熱しても壊れにくいという特徴があります。
むらさき芋を使っている場合は、紫の色素の成分で抗酸化作用のあるアントシアニンを摂ることができます。

粒あんで食物繊維たっぷり

いきなり団子の主役となるもう一つの食材が「小豆」。

あんこには皮を残した「粒あん」と、粒あんを濾して皮を取り除いた「こしあん」があります。いきなり団子には「粒あん」が使われていて、皮が残っている分食物繊維も多く残っているのです。

食物繊維の中でも小豆の皮のような不溶性食物繊維は、腸を刺激して動きを活発にすることで便通をスムーズにする役割があります。さらに、小豆には強い抗酸化作用を持つポリフェノールが含まれています。

糖質は比較的高めですが、脳のエネルギー源にもなりますし、食物繊維と一緒に摂ることで血糖値の吸収が穏やかになります。

また、ゴロゴロとした大き目の芋や粒を感じられるあんのおかげで、よく噛んで食べることにつながります。
最近はふんわり、もっちり、とろけるなどといった噛む必要のないくらい柔らかいおやつも増えている中、自然食材でしっかり噛めるおやつは魅力的ですね。
忙しい方には朝ごはんとして、成長期の子どもたちには塾や習い事の前のエネルギーチャージとしての補食にもオススメです。ご自宅で手作りする際は大きさや甘さの調整もできるため、オリジナルのいきなり団子も良いでしょう。

アレンジ自在!おうちで作ってみては

熊本市観光政策課

熊本市観光政策課

さつま芋とあんこだけのシンプルないきなり団子ですが、むらさき芋や安納芋など種類にこだわったり、チーズや黒糖を加えていたり、全体にきな粉がまぶしてあったりとお店によって様々なアレンジがなされているようです。

熊本県では和菓子屋さんに置いてある他、サービスエリアや町中にはいきなり団子の専門店があるほど有名な郷土菓子ですので、熊本県を訪れた際には食べてみてください。

さつまいもが旬を迎えるこの季節なら、ご自宅でも美味しく作れます。ご当地おやつを家族で楽しんでみてはいかがでしょう。

磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)

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大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

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