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2021.09.09

スマホアプリで行う腰痛セルフケアは有効か【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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スマートウォッチなどのウェアラブル端末とスマートフォンを使って、歩数や消費カロリーなどを計測している方もいるのではないでしょうか。この方法は、腰痛予防もできる可能性があるのだとか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、JAMA Internal Medicine誌に、2021年8月2日ウェブ掲載された、スマートフォンなどを用いたセルフケアの、腰痛に対する有効性を検証した論文です。

▼石原先生のブログはこちら

腰痛はセルフマネージメントで管理できるか?

背中や腰の痛みは非常に一般的な症状で、ぎっくり腰では動けなくなって日常生活にも大きな影響があります。

その中には確かに、椎間板ヘルニアなどの腰椎疾患や、圧迫骨折や骨腫瘍など、専門的な検査や治療が必要とされる病気もありますが、多くは筋肉の疲労やストレスなど、様々な一般的要因が集まったもので、特定の病気という性質のものではありません。

その治療にも定まったものはなく、リラクゼーションや運動、規則正しい生活など、一般的な生活習慣の改善が有用であるという複数のデータが存在しています。

ただ、医療機関において、そうした生活指導を継続して経過をみることは、慌ただしい通常の外来診療においては非常に困難で、結果として湿布や痛み止めで経過をみるだけ、という状態になりがちです。

最近スマホなどの進歩により、自分で自分の健康や状態を管理するセルフマネージメントの考え方が広まり、スマホアプリとウェアラブル端末(腕時計など)を連携して、健康管理や生活改善をサポートするシステムが複数開発され利用されています。

全ての病気にこうした方法が向くという訳ではありませんが、原因不明の腰痛などは、セルフマネジメントの効果が期待出来る分野であることは、間違いがありません。

ウェアラブル端末とスマホを用いた腰痛管理の有効性を調査

そこで今回の研究ではデンマークとノルウェーにおいて、プライマリケアでの腰痛の患者さんを登録し、くじ引きで2つの群に分けると、一方は通常の指導をクリニックにて行うのみとし、もう一方はそれに加えて、ウェアラブル端末とスマホを用いたセルフマネージメントシステムを導入して、3か月の経過観察を行なっています。

腰痛については、RMDQ(もしくはRDQ)スコアという指標を用いて、その日常生活への障害の程度を数値化しています。その日本語版がこちらです。

この24の質問の「はい」の数を合計したものがスコアで、それが高いほど腰痛の程度が重い、というように判断されるのです。

セルフマネージメントの仕組みはこちら。

コンピューターに入力された問診などの情報から、その人にとっての適切な生活改善プログラムが作成され、それがスマホに表示されます。その達成率はウェアラブル端末の情報なども利用して評価され、フィードバックされると言う仕組みです。

次にこちらをご覧ください。

1日の歩数や決められた運動量など表示されています。

それでは次はこちらを。

期間ごとの達成率がこのように表示されています。

対象者は全体で461名で、こうした運動などのセルフマネージメントプログラムを活用して3か月のトライアルを行なったところ、通常指導のみの場合と比較して、RMDQスコアは0.79点(95%CI:0.06から1.51)有意に改善していて、少なくとも4点改善した比率は通常指導が39%であった一方、プログラム使用群では52%でした。

今後は、ITを使用した健康管理が主流に

このように、それほど顕著とは言えないと思いますが、セルフマネージメントプログラムは通常の診察室のみでの指導と比較して、一定の有効性が確認されました。

勿論こうしたアプローチは、全ての健康状態で同様に可能なものではありませんが、今後分野によってはこうしたITの使用が健康管理の主流となることは間違いがなさそうです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36